Firstrade証券、およびIB証券について

2018/09/01

海外証券会社 資産運用

※IB証券の月間最低取引手数料の10ドルが廃止されました。

私はFirstrade証券(ファーストレード証券)を使い、その後、IB証券(インタラクティブ・ブローカーズ、Interactive Brokers)に移行しました。
この記事ではこの2社を比較しながら紹介したいと思います。

目次

はじめに

Firstrade証券は株式、オプション、ミューチュアルファンドなどの全ての商品の売買手数料を無料にしました。
これによって今まで最安コストであったIB証券よりも売買手数料で勝るようになります。

日本から利用できる海外の証券会社としては、FirstradeとIBが有名かと思います。他の証券会社もありますが、手数料が安く日本での情報も多いところはこの2社だと思います。
海外の証券会社を利用する利点としては、幅広い米国株を取引できること、オプション取引を行えること、手数料が安いことなどがあります。また、日本には無い制度として、ETFの配当金自動再投資が売買手数料無料でできるシステム(DRIP)があります。
しかし、最近になって国内の証券会社であるサクソバンク証券が、米国株式オプションを扱い始めました。DRIP制度もあるなど、国内証券会社の中では最も海外証券会社に近い自由度があります。手数料がやはり高いことや、注文方法が限られるなど欠点があり、オプション取引もやはり制約が多そうですが、国内証券会社だけの税制メリットを享受できる点がメリットです。

税制

海外の証券会社は、米国株やオプション取引などを低コストで自由に取引できますが、税制面では不利になります。
株式(ETF含む)の譲渡の場合、申告分離課税で一律20%、国内で取引した株式損益との損益通算も可能ですが、国内での取引とは違い、損失の3年後までの繰越が認められません。
オプション取引に至っては雑所得の総合課税であり、こちらは国内外の株式および国内の先物等(FX含む)との損益通算ができない上に、次年度への損失の繰り越しも認められません。
基本的に同じ種類の課税グループ内でしか損益通算はできません。

課税区分は以下の通りとなります。

国内証券会社で取引する上場株式(ETF含む)の譲渡損益
上場株式に係る申告分離課税。ただし、特定口座(源泉徴収あり)を使う場合、その分の確定申告をしなければ合計所得金額に算入されないという利点があります。確定申告によって3年まで損失の繰り越しが出来ます。損失が出た場合、国内および海外証券会社での配当と損益通算できます。
海外証券会社で取引する上場株式(ETF含む)の譲渡損益
上場株式に係る申告分離課税。ただし、特定口座は利用できないため、確定申告が煩雑です。上記したような特定口座(源泉徴収あり)のメリットが享受できません。損失の繰り越しができません。国内証券会社で取引した上場株式の譲渡損益と損益通算できます。配当との損益通算は不可。
国内および海外証券会社で取引する上場株式(ETF含む)の配当
配当所得。総合課税または申告分離課税の選択制。日本株の配当を総合課税で申告する場合は配当控除が利用できます。国内・海外証券会社問わず、申告分離課税で申告する場合、国内証券会社の上場株式の譲渡損失と通算が可能です。国内証券会社での配当については源泉徴収されているので、確定申告する利点が無ければ確定申告する必要が無く、そうすると合計所得金額に算入されない利点があります。
国内上場デリバティブおよび国内業者の店頭デリバティブ
雑所得の申告分離課税。一律20%で、3年までの損失の繰り越しが可能。
海外上場デリバティブおよび海外業者の店頭デリバティブ
雑所得の総合課税。損失の繰り越し不可。

※国内業者と海外業者で税制が異なるというよりも、正確には金融庁の認定を受けているかどうかで異なります。しかし一般的な国内業者であれば認定を受けており、逆に海外業者で認定を受けているところは存在しないため、概ねでは、国内業者と海外業者で税制が分かれているということになります。

税制に関しては複雑なので、不明点は税務署に聞かれるか、税理士ドットコムで質問されたりするのが良いかもしれません。
海外の証券会社を利用すると税制上不利な上に、確定申告が煩雑になります。
このようにデメリットが大きいため、どうしても海外で取引する利点が大きい、もしくは海外でないと取引できないという場合のみ海外での取引を検討するのが良いと思います。
海外証券会社の税制と確定申告の方法については別記事にまとめました→海外証券会社の税制と確定申告【IB証券、Firstrade証券、他】

それではFirstrade証券とIB証券について比較しながら情報を書いていきます。
基本的に口座開設の手順紹介はしませんので(既に情報があるため)、それについては他サイトを参考にしてください。

紹介

Interactive Brokers(インタラクティブ・ブローカーズ)

Interactive Borkers(IB証券)は、海外の証券会社の中では唯一、日本に支店があり、日本語に対応しています。
なので、日本人からは利用しやすいイメージがあるかもしれませんが、プロや取引回数の多い人向けに設計されている証券会社であり、口座開設の際の年収・資産要件が厳しめです。
投資経験も一定程度要求されます。特にオプション取引に関しては2年以上のオプション経験年数と、年間100回以上の(株式+オプション+先物)取引経験数が必要なため、この要件を守るなら一般の個人、特に長期投資家がオプション取引の許可をもらうのは難しいです。
まず、国内ではオプション取引の経験を積む機会が限られます。日経225オプションは個人では取引単位が大きすぎます。サクソバンク証券であれば各種オプションは利用可能です。日本株のオプション(かぶオプ)は流動性が少ないと思いますが存在します。
ただし、口座開設時に受けられる簡単なテストに合格すれば、2年以上のオプション経験は免除されますので、全くオプション経験が無くても大丈夫なのかもしれません。
そして年間100回以上の取引経験数が必要である点がネックです。ある程度頻繁に取引を行うトレーダー向けに設計されています。
ただし、システムの優秀さ、取り扱い商品の豊富さなど、一般の投資家にとっても優れた証券会社であることは確かです。
継続的に発生する手数料に関しては、月間の最低取引手数料が10ドルに設定されているため、掛かった取引手数料が10ドルに満たない場合でも10ドルがかかります。→廃止され、頻繁に取引をしない投資家にとっても使いやすくなりました。
リアルタイムマーケットデータ(リアルタイムの株やオプション価格)が有料ですが、頻繁に価格データをチェックする必要が無いのであれば後述するスナップショットリクエスト機能を利用すればとても安くリアルタイム価格を参照できます。
売買手数料やマージン金利(現金借入金利)、空売りにかかる金利などが安く、トレーダーツールは多機能でプロ仕様です。ただしトレーダーツールは複雑で慣れが必要です。
FXや両替も利用でき、これらのスプレッドも狭いです。
サポートですが、日本語にて電話、チャット、メールなどが利用できます。
電話、メールで数回問い合わせしましたが、どの際も対応は丁寧でした。

インタラクティブ・ブローカーズ(Interactive Brokers)のホームページ

Firstrade Securities(ファーストレード証券)

Firstrade証券は、英語での利用が必要ですが、一般個人向けの証券会社です。
取扱商品・サービスの充実度はIB証券に劣ります。
先物、先物オプション、FXの取り扱いがありません。オプション取引は出来ますが、ネイキッド(単体)のコールオプション売りができません。
取引画面はシンプルで多機能ではありませんが使いやすいです。
各種の売買手数料は無料です。
ただし、マージン金利(現金借入金利)は高く2020年7月現在8.75%以下であり、IBの1.6%以下とはかけ離れています。これらの金利は、利用額が大きくなるほど徐々に低下します。米国の証券会社のマージン金利はIBを除いて非常に高いようです。
空売りにかかる金利はゼロなのでIBの1%以下~3%程度より安いですが、一方で口座内のキャッシュにかかる金利(受け取ることができる金利)はIBが一定程度ある(ただし10000ドル以下の部分のキャッシュには金利ゼロ)のに対し、Firstradeではゼロに近いです。
サポートについては英語が必要です。
私は今までメールで10件以上問い合わせをしましたが、メールの返事は早いですが内容は丁寧とは感じません。
こちらの質問をあまり読んでいないように感じたり、質問に対して回答がかみ合わない事が多いです。
私がキャッシュバックの貰える口座開設プロモーションのコードを入れ忘れて開設した時、問い合わせたらプロモーションを適応してもらえましたので、これについては融通が利くと感じました。
ただ、こちらからの質問に正面から答えてくれなかったり、一部の質問をスルーされたりすることが多いです。
相手は問い合わせ対応が嫌なのだろうかと感じるような場合も多かったです。
しかし私の今までの経験では、これはアメリカ人に良くあることのように思われます。
コミュニケーション能力が低いのか不真面目なのか、そういう人が一定数いるように思います。
一方で親切な人にも当たったことがあるので一概に言えないのですが、サポート担当者の性格頼りということになります。

【PR】ファーストレード証券(Firstrade Securities)のホームページ

各種手数料

詳しく解説します。
今までは手数料体系はIBが最安だったのですが、初めに述べた通り、Firstarde証券の各種商品の売買手数料がゼロになりました。
ただし、注意点としては、マージン金利が高いため、マージン口座において、お金(キャッシュ)を借りて株式等を買う場合は注意が必要です。
逆に空売りの場合は、金利(貸株料)が通常はかかりませんので利点があると言えます。
ただし、口座内のキャッシュへの金利がほとんど付かないことを考慮する必要があります。
空売りで得られたキャッシュへの金利は付かず(恐らく)、そして口座内に元々あるキャッシュへの金利もほとんど付きません。
IBの場合、2019年1月時点で、100000ドル以上の口座内資産のある顧客には、10000ドル以上の口座内キャッシュに1.9%の金利が付きます(ドルの場合)。10000ドル以下の部分のキャッシュには金利が付きません。
100000ドル未満の口座内資産の顧客の場合、「口座内資産/100000ドル」を上記の金利に掛けた分だけ金利が受け取れます。
株の空売りで得られたキャッシュについては100000ドル以上から1.15%~の金利が付きますから、大口投資家で無い限り、空売りで得られたキャッシュには金利が付かないことになります。
これらを考慮すると、基本的にはFirstradeの空売りに係るコストはIB以下であると言えると思います。
ただし、空売りに関してはFirstrade、IBどちらであっても逆日歩が発生する可能性があります。逆日歩とは、借りることのできる株が少なくなることにより、空売りに追加にかかる料金のことです。
日本で使われる用語ではありますが、アメリカでも同様のことが起こりますので便宜上この言葉を使わせていただきます。
Firstradeでも逆日歩によって料金が発生する場合があります。
私が空売りとして利用する銘柄"VXX"について見ていると、Firstradeでは比較的逆日歩が発生しやすく、一方IBでは、Firstradeほど逆日歩は発生しないようです。
2018年10月に多少相場が荒れて"VXX"の空売り需要が高まった際はFirstradeでは2~3%程度(年率)の逆日歩料が発生したタイミングが何回かありました(その後11月~1月まではずっと逆日歩が掛かっています)が、私が確認した限りでは、IBではどのタイミングでも通常通りか、又は1%以下の上乗せ利率でした。
また、後述しますがFirstradeでは割と簡単に空売りの発注禁止が起きますが、IBでは発生しにくいと思います。

IB証券の株式・オプション等売買手数料に関しては、一度にどの程度の数量を取引するかにもよります。変動プランと固定プランの2種類があり、米国オプションは変動プランのみですが、株式はどちらかを選べます。私が試算したところによると、小額での取引の場合は変動プランを利用するほうが安くなる可能性が高いと思われます。変動プランの場合、最低手数料が0.35ドルとなっていますが固定プランの場合は1ドルです。ただし、変動プランの場合は証券会社(IB証券)の手数料に加えて、主に取引所手数料が上乗せされます。手数料はそれ以外にもありますが大きな値ではありません。この取引所手数料などを考慮しても、少額取引なら変動プランのほうが安いです。

アメリカの取引所の特徴として、「流動性付加注文(Add Liquidity)」と「流動性除去注文(Remove Liquidity)」の間で、前者の手数料を安く(マイナス手数料となり逆にリベートとして支払いを受けられる場合も多い)、後者の手数料を高く設定する場合が多いです。「流動性付加注文」とは、指値などにより即座に約定しない注文、「流動性除去注文」とは、成行や、即座に約定する価格での指値による注文です。つまり、即座に約定する注文を出す場合には取引所手数料が高くかかる可能性があることに注意が必要です。株式の場合、例えば流動性除去注文には一株あたり0.003ドルといった手数料がかかります。この手数料は少額の注文であれば影響は軽微であり、これを考慮しても変動プランのほうが安い可能性が高いと思います。
しかし米国オプション取引ではより影響が大きく、即座に注文が約定するような流動性除去注文には取引所手数料が1枚0.4~0.5ドル程度(PennyPilot銘柄の場合※)かかる場合が多いです。逆に流動性追加注文にはリベート(取引所からの支払い)がある場合が多いようです。取引所によってこれらの手数料体系は異なりますが、IB証券ではこれら手数料も考慮した上で、どの取引所に発注するか決定するシステムとなります(発注先に"SMART"を選択する場合)。
米国オプション取引においては、流動性追加か流動性除去で手数料に大きな差が出るということは確かです。スプレッドの開いたオプション銘柄であれば通常、スプレッド内で指値を行うので流動性追加注文になり易いですが、スプレッドが最小のオプション銘柄では、約定を狙う場合には即座に約定する注文を出すしか無いように思います。
これらは取引所の制度であり、実際は証券会社が顧客に課す手数料体系を最終的に決めるのですが、IB証券の場合、コスト変動プランであれば取引所の手数料やリベートを概ねそのまま顧客にパススルーようです。固定プランの場合は取引所手数料は直接関係が無く、リベートも通常は発生しないと思われます。
Firstradeの場合も、売買手数料が無料なのは証券会社からの手数料のみであると思うので、これら取引所手数料等はかかってくるものと思われます。リベートが受け取れるかどうかは分かりません。
※Penny Pilotとは、通常より細かい値幅での注文を可能とするプログラムで、一定の銘柄が加入しており、オプション価格が3ドル以上は0.05ドル、3ドル未満は0.01ドルでの注文値幅となります。実際に表示されているBid/Ask値を確認すれば、それがPennyPilot銘柄なのか判断できると思われます。
IB証券における取引所手数料については次の記事で考察しています→IB証券における取引所手数料について

オプションの権利行使および割り当てに関しては、Firstradeでは14.95ドルも手数料がかかることには注意が必要です。→無料になりました。
一方IBではこの手数料はかかりません。

IBではFX取引が行えます。FXの種類には、両替(FX Conversion)、Cash Forex、Forex CFDの3種があります。両替とCash Forexは実際に現金を動かす取引で、掛かってくる手数料や金利は同じだと思われ、違いはCash Forexではレバレッジ取引が可能である点です。いずれのFXもスプレッドが狭く、それとは別に手数料が最低2ドルかかります。両替とCash Forexにかかる金利は、これらの取引が行われた後の口座内の通貨バランスによって決まります。両替であれば特定の通貨がマイナス残高になることは無いため、保有通貨にかかる金利(受取または支払い)のみが発生します(両替とは別に、通貨の借入を行って株式を購入や空売り等した場合は別)。Cash Forexの場合はレバレッジが効かせられるため、口座内の特定の通貨がマイナス残高となることがあるので、その分には借入金利が発生します。Forex CFDは差金決済であるため、実際に現金は動かず、そのためForex CFD専用の金利体系が用意されています。Forex CFDが日本におけるFXに近いと思われます。
しかし共通することとしては、IBでは金利の受け払いに対して、市場レートに対して上乗せ金利を課しています。受け取り金利は少なく、支払い金利は多めになります。事前にIBのウェブページで金利を確認されることを勧めます。
例外として、日本円は本来マイナス金利なのですが、日本円を現金で保有している場合の金利は、一定の額までゼロ金利となります。
日本円のような例外を除いて、通貨を現金で保有していると受け取れる金利はゼロまたは市場金利よりも低くなります。余っている現金があれば短期米国債ETFなどを購入することで受け取れる金利水準を市場金利に近づけることができます(証拠金余力は消費しますが)。そのため、余っている現金があれば放置しておくよりも日本円か、ETFなどに費やすのが良いと思います。※日米租税条約の改正によって、米国で発生する利子所得の源泉税10%が免除されるようです。そのため、ETFよりも債券として直接保有するメリットが高まりました。短期米国債を保有するのが良い選択肢になると思います。ただし、債券は売買手数料が高い傾向にあることには注意が必要です。米国国債であれば証拠金余力を殆ど消費しないメリットもあります。
日本円など米国以外の通貨も証拠金として使用できますが、米国商品を直接買うことは出来ません。米国商品を買う場合は米ドルが必要なため、口座内にそのための米ドルが足らない場合、その分がマイナス残高となり、その分に借入金利がかかります。

証券会社への入金にかかる手数料に関しては、IBに分があります。IBは日本円入金が可能で、かつIB内で安くドルに両替ができます。
日本円入金に関しては、三井住友銀行か三菱UFJ銀行から、非居住者向け日本円送金として手数料800円で行うことが出来ます。
Firstrade証券への入金は米ドル送金であるため、両替と海外送金が必要であり、手数料が高くなります。ただしFirstradeのプロモーションにて、25000ドル以上の送金にかかった手数料のうち25ドルまでが還元されます(今までのところ常時開催)。
Firstradeへの送金に関して詳しくはソニー銀行からFirstrade証券への送金を参考にしてください。

出金手数料はIBは月一回まで無料ですが、Firstrade証券は35ドル(日本への送金の場合)かかりますし、Firstradeの場合、米ドルで受け取った後の両替にかかる手数料もIBでの両替手数料より多くなると思います。
他社へのポジション移管に掛かる手数料も、Firstradeは75ドル(口座内全ての移管の場合)もかかるのに対し、IBでは無料です。どちらとも、移管の受け入れは無料です。

IBではリアルタイムの株価等を見る場合にはマーケットデータを購読するか、もしくはスナップショットデータを用いることが必要となります。前者は月額料金を払うことで常にリアルタイムデータを表示できるもので、プロや頻繁に取引をする人向けですが、後者はリアルタイム株価を知りたい銘柄についてスナップショットデータをリクエストすることで、0.01ドル(米国上場株式の場合)または0.03ドル(その他銘柄)の料金でその時点でのリアルタイム株価が見られるというシステムです。リアルタイム株価を更新すると、再リクエストという形となり再び料金がかかります。更にIBのホームページには「月に1ドルが免除額として適用される」とありますので、1ドルまでのスナップショットデータのリクエストは無料であるようです。更にスナップショットデータ料金は月ごとに、対象が同じであるリアルタイムマーケットデータ購読料金が上限となり、上限に達した後は月末までリアルタイムマーケットデータを無料で使用できるようになります。
また、自分が保有する銘柄に関しては上記の方法を取らなくてもリアルタイムの市場価格平均値が分かります(TWSの「モニター」ウィンドウ→「ポートフォリオ」タブから、各銘柄の日次損益にカーソルを合わせる)。

マージン制度

キャッシュ口座を利用する人には関係が無い制度ですが、現金の借入や空売り等をするにはマージン口座が必要です。
オプション取引に関してはFirstradeの場合マージン口座が必要で(→不正確な情報?)、IBではオプション買いやカバードコール、プット売り(現金確保)がキャッシュ口座でも可能です。
また、キャッシュ口座では証券の決済金額――株式を売却して得たキャッシュなど――がすぐに口座余力に反映されず、数日後にその分の金額は利用可能になります。
直ぐに利用可能にするためにはマージン口座が必要です。
マージン口座であるからといって、必ずしもお金を借りた取引をする必要はありません。日本の信用取引とは違い、マージン口座を利用した株式の買いにおいては株式を購入するための代金の不足分のみを借りることになりますので、購入代金が不足していなければ借入は発生しません。借入にかかる金利も、株式全額ではなく不足した金額(借り入れた金額)のみにかかります。また、現金の借入が有るか無いかに関わらず、購入した株式は自己保有となり、配当も受け取ることが出来ます。
マージン制度は複雑で、私も理解しきれていないのですが、理解できた範囲で解説します。

株式には、個別の株式ごとに、必要な証拠金率(Margin Requirement)が設定されており、株式の価格に証拠金率をかけた額が、マージン取引を行う場合の必要証拠金となります。
証拠金は、基本的には証券の時価に証拠金率を掛け合わせて算出されるため、株式の価格が変動すると、必要証拠金額も変動します。
証拠金は、委託証拠金(Initial Margin)と維持証拠金(Maintenance Margin)に分かれます。
Firstradeでは、多くの株式は、委託証拠金率(Initial Margin Requirement)が50%、維持証拠金率(Maintenance Margin Requirement)が25%になっています。
IBでは多くの株式が委託証拠金率、維持証拠金率ともに25%です。
委託証拠金とは、株式の発注時に必要な証拠金であり、維持証拠金とは、株式ポジションの維持に常に必要な証拠金です。
リスクの高い株式は、必要証拠金率が高く設定されます。
更に注意点として、SMA(Special memorandum account)という制度によって、日を跨いで株式ポジションを保有する場合には、SMAバランスが0以上になることが求められます。
SMAバランスは、特定の計算方法による証拠金余力のようなものを指します。
SMAではRegulation T証拠金率(Reg T証拠金率)が適用され、これは通常は50%で、リスクの大きい特定の株式に関してはそれ以上となります。
概ね、取引時間終了時において保有ポジションのReg T証拠金を満たしていれば問題は無いのですが、通常の証拠金計算とは違って株式の時価の50%の証拠金が常に必要という訳では無く、SMAが減少するのは主に新規のポジション建てと、口座からの現金の引き出し等に限られます。つまり、ポジションの価格変動による損失からはSMAは減少しません。
計算方法は複雑で私も良く分かっていませんが、概要だけ説明いたしました。
新規のポジションを建てる際には委託証拠金だけでなく、このSMAに注意する必要があります。翌日に持ち越さなければ関係ありません。
IB証券におけるポートフォリオマージン口座は、ルールベースではなくリスクベースの証拠金要件になるので、この規則(SMA)は適応されないかもしれません。詳しくは分かりません。
Firstradeのマージン口座、IBのRegTマージン口座はSMAが適応されます。
現在のSMA値の表記はIB証券ではありますが、Firstradeでは見当たらないので判断しにくいです。しかしFirstradeでも適用されます。

オプション買いに関してはFirstradeではマージン制度が利用できず、全てキャッシュで購入することになります。
IBでもオプション買いは全額キャッシュで購入することになりますが、原資産との組み合わせなど他との組み合わせによっては、そのポジション全体で必要証拠金が決定されます。
オプション売りに関しては証拠金の算定ルールが証券会社によって設定されていますが、詳しくは不明です。

基本的には、証拠金余力(Buying Power)がゼロ未満にならなければポジションが維持されます。
証拠金余力は、「(流動性資産価値 - 米国オプション価値) - 必要証拠金」が通常となりますが、具体的には細かいルールが証券会社ごとに決められています。
流動性資産価値とはその時の清算価値のことで、含み損益も考慮した自己資産です。
米国オプションの価値はIB証券、Firstrade証券双方において証拠金として含めないようです。
そのため、プロテクティブコール(原資産ショート+コールオプションのロング)やプロテクティブプット(原資産ロング+プットオプションのロング)などのオプションによるヘッジポジションがあり、最大損失額以上の流動性資産額があったとしても、証拠金余力に反映するのは原資産の損益のみであるため、証拠金余力はゼロ未満になり強制決済が発生する可能性があります。
このような強制決済を避けるには、「原資産+ロングオプション」の組み合わせでは無く、それと同じ価値を持つオプション単体で保有する必要があります。
つまりプロテクティブコールであれば同じ権利行使価格のプットオプションのロング、プロテクティブプットであれば同じ権利行使価格のコールオプションのロングです。

株式の保有(ロング)の場合、株価が下がれば必要証拠金は下がりますが、流動性資産価値も減少するために総合では証拠金余力は減少します。
例)手持ちのキャッシュが100ドルの時、必要証拠金率50%の株を100ドル分購入。その後株価が50ドルに下がったとします。
必要証拠金 50 → 25
流動性資産価値 100 → 50
証拠金余力 50 - 25 = 25
となります。
株価が上がれば、(上昇額 * (100% - 必要証拠金率))だけ証拠金余力が増加し、株価が下がれば(下落額 * (100% - 必要証拠金率))だけ証拠金余力が減少します。
※100ドルの株を100ドルの現金で購入しているので、現金の借り入れは発生していませんが、この後に新たな株を購入すれば、不足分だけ現金の借り入れが発生します。

株式の空売りの場合の証拠金の計算方法については、どうやらFirstradeとIBで異なるようです。
Firstradeの場合、株式のロングの場合と異なり、ショートポジションの価格変動によって必要証拠金のみが変化し、ショートポジションの価格変動による流動性資産価値の変化は証拠金余力には反映しないようです。
例)手持ちのキャッシュが100ドルの時、必要証拠金率50%の株を100ドルで空売り。その後株価が150ドルに上がったとします。
必要証拠金 50 → 75
流動性資産価値 100 → 50
証拠金余力 100 - 75 = 25
証拠金余力を計算式で示すと「ショートポジションの含み損益を除いた流動性資産価値 -  必要証拠金」です。※オプションがあれば、その価値も流動性資産価値から除かれます。
株価が上がれば、(上昇額×必要証拠金率)だけ証拠金余力が減少し、株価が下がれば(下落額×必要証拠金率)だけ証拠金余力が増加します。
株式のショートポジションの時価は必要証拠金のみに影響があるというのはFirstradeのカスタマーサポートに問い合わせて得た答えですが、実際にそのようになっているか一応ウェブ画面のBuying Powerの数値の動きを見て確かめた方が良いかもしれません。
IBの場合は、ロングポジションと同じように流動性資産価値はそのまま証拠金余力に反映されますので、この例で言えば
証拠金余力 50 - 75 = -25
となりマージンコールが発生します。

全額キャッシュで購入または空売りする必要のある証券を、Non-Marginable Securityと言います。
必要証拠金率が100%の株式と、Firstradeにおけるロングオプション(オプション買い)が当てはまります。
必要証拠金が100%未満の株式は、Marginable Securityと言います。多くはMarginable Securityです。

Firstradeでは、証拠金余力をNon-Margin Buying Powerとして表されます。
Cash Buying Powerと言っても良いと思います。
これをゼロにしないことが重要です。
また、Margin Buying Powerという項目もありますが、これはマージン制度を利用して購入または空売りできる証券の限度額を表します。目安としてNon-Margin Buying Powerの2倍の金額になると思います。多くのMarginable Securityの必要証拠金額は50%だからです。
Non-Marginable Security(必要証拠金率100%の株式やロングオプションなど)についてはその時価分がNon-Margin Buying Powerに表される証拠金余力を使います。
Marinable Securityについては、その必要証拠金分だけNon-Margin Buying Powerを使います。
Non-Margin Buying Powerは証拠金余力ですので、保有するMarginable Securityの含み損益の影響を受けます(Non-Marginable Securityの含み損益の影響は受けない)。
Margin Buying Powerは単なる目安です。

IB証券における証拠金計算については、より詳しくはIB証券における証拠金の計算方法 を参考にしてください。

金利計算

前項の内容は、マージンコールを受けないようにポジションを維持するための知識です。
キャッシュを借入しているかどうかの判断は別に必要になります。ロングポジションを保有しているだけであれば単純に新規の購入代金が現金残高を超えないようにすれば良いのですが、ショートポジションがあると少し複雑になります。

Firstradeの場合はキャッシュバランス(Cash Balance)を見ます。
キャッシュバランスに表示される値は、初めに自己保有していた現金から、ロングポジションの購入代金を引き、ショートポジションがある場合はショートによって得られた現金を足し、担保として拘束される現金を引いた値です。これがプラスであれば借入は発生していません。ショートにより得た現金とその担保は初めは同額なので相殺されます。必要な担保額はショートポジションの時価の100%であり(Firstradeの場合)、時価の変動によって担保額も変動します。
借入が発生すると、キャッシュバランスがゼロになり、借入金の額だけマージンバランス(Margin Balance)にマイナスの値が表示されます。
ショートバランス(Short Balance)には、ショートポジションの担保として拘束されているキャッシュ額がプラスの値で表示されると思います。
この三つの値を足せば、保有しているキャッシュ残高になります。更に保有している有価証券の時価(ショートポジションはマイナスの値)を足せば、口座内の資産価値になります。

IBの場合は分かりやすい指標がどうやら無いようです。
IBで表示される現金残高には、ショートポジションの担保として拘束される現金が引かれていません(含まれています)。つまり、自己保有している全ての現金を表しています。
米国の金融商品を取引している場合はUSDでの現金残高から、概ね空売りされた株式の時価(マイナス表記)の102%を加える、つまりその絶対値を減じた額が、残りの現金となるようです(Firstradeでのキャッシュバランスに相当)。
残りの現金がプラスであれば、その分の金利が受け取れ、マイナスであれば現金を借り入れることになり、マイナス分に借入金利が掛かります。
現金残高は、TWS→口座ウィンドウ→マーケットバリュー通貨別現金残高 から見られます。
ただし、IB証券の金利についての正確な計算方法はMargin Interest Calculations(英語)を参考にしてください(日本語訳はIB香港のページですがこちら→金利・利息 - 計算方法)。コモディティ口座やIB UKL口座(CFD用口座)での残高がある場合はそれらも考慮して計算されます。

ショートポジションの現金借入について改めて説明します。これは株式の空売りの話で、オプションに関しては関係がありません。
空売りした場合、その時価評価額程度の現金(その資産の通貨に限る)を担保として差し入れることになり、その現金が不足すると借り入れが発生します。
ポジションを建てた当初は売った代金が担保として充てられますが、ショートポジションが評価損になると担保が足りなくなり、その分の現金が追加で必要になります。逆に評価益となると担保額が少なくなります。
これはポジションの必要証拠金とは別の問題で、現金の借入金利が掛かるかどうかの問題になります。
マージン金利(現金借入金利)についてはFirstradeのほうが大きく不利です。

取引関連

Firstradeの取引はウェブ画面上で行います。シンプルで分かりやすいですが、多機能ではありません。また、動作が重い時があります。
1銘柄ごとの注文のほか、One Cancels the Other(2つの注文を同時発注し、一方が約定されたらもう一方は自動でキャンセル)と、One Triggers the Other(1つの注文が約定されたらもう一方の注文を自動で発注)があります。株式とオプションの組み合わせもできます。このOne Triggers the Otherに関してはIB証券で同等の機能がありません。似た機能はありますが特定の銘柄の約定をトリガーとして別の銘柄の注文を発注するということが出来ません。しかしそもそもIB証券ではコンビネーション取引が充実しているのであまり需要は無いかもしれません。
オプション取引ではオプションチェーン(Option Chain)が取得できます。
GreeksとIVの表示も行えますが、Near the Moneyのみです。
また、直近の約定価格にて計算しているようなのでリアルタイムのBid-Ask価格の中値を基準にしたものではないこと、また計算に使われる金利が、Firstradeの口座内キャッシュに付く金利を用いているため、非常に低い水準になっていることなどがあります。
しかし第三者の機関が公開しているオプション計算機がありますので、これによって正確なIV等の算出は可能です。
オプション取引ツール(Option Wizard)もあり、こちらでオプションポジションの分析が行えたり、スプレッドでの発注も行えます。
ただしスプレッド注文は取引量の多い限られたスプレッドしか受け付けてもらえないと思います。IBのほうがこのあたりの機能は充実しています。
空売り注文に関しては、Firstradeは当日が期限の注文しか行えません。

IB証券は、TWS(Trader Workstation)というツールを使いますが、複雑で慣れるのに時間がかかります。ただしFirstradeよりずっと多機能であり、便利な注文方法が複数存在します。例えば、ある銘柄が指定の価格に届いたら、別の銘柄を発注といったことも出来ます。よりシンプルなWEB上のツールも使えますが、機能は限定されていると思われます。
IBでは時間外取引に対応しています(Firstradeでも申請すれば出来るようです)。空売り注文に関してはGTC(キャンセルするまで有効)に普通に対応しています。
IB証券の注文方法についてはIB証券の注文方法 (TWSの使い方) を参考にしてください。

その他

空売りしている株式は、需給によっては逆日歩のみならず強制的に買戻ししなければならい場合があるようです。
事前通知がある場合と、緊急の場合は無い場合もあるようです。

空売りに関して、Firstradeでは割と簡単に新規注文の禁止が起こるようです。
"VXX"について言うと、VXXの値が跳ね上がったタイミングで新規注文が禁止されることが多いようです。
2018年11月の相場が荒れた時期にFirstradeではVXXの空売り注文禁止が断続的に起き、その後1月現在までは継続的にVXX(や関連銘柄)の空売りが禁止され、新規のVXX空売りが出来ませんでした。私が確認した限りでは、IBでは注文禁止になったタイミングはありませんでした。

Firstrade証券の場合、出金の際に10000ドル以上だと電話確認があるということです。
これは英語が苦手な方にとってはデメリットかもしれませんが、一度だけのようですし、上手く話せなくても伝われば良いので、英語が全く分からないので無ければ何とかなるのではないかと思っています。
ちなみに、私は電話確認未経験の状態でポジション移管を行いましたが、その際は電話確認はありませんでした。

まとめ

Firstrade証券は一般の個人向け、インタラクティブ・ブローカーズ(IB)はプロ向けという傾向はあるのですが、Firstardeのシステムは様々な点でIBに及ばない印象です。
投資家(トレーダー)視点での使い易さがより考慮されているのはIBだと思います。
ただし口座開設要件が厳しめである点はネックです。
手数料に関しては基本的にFirstradeのほうが安いとは言え、状況にもよります。Firstradeの売買手数料が無料というのは大きな利点です。

Firstradeはサポートの悪さ、そしてリスクの高い株式(VXXなど)の空売りがしにくい、ネイキッドコールオプションの売りが出来ない等の問題点はありますが、一方でシンプルな取引、例えば株式の保有や、オプション買い、カバードコール、プット売り等に留まるのであればFirstradeは適した選択だと思います。

現在のところは以上です。
新しい情報がありましたらまた追記いたします。

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