IB証券における取引所手数料について

2019/10/12

海外証券会社 資産運用

IB証券では、取引手数料に関してIBから直接請求されるものに加えて、取引所手数料が発生する場合があります。他にも発生するものはあるのですが、金額が大きいのは取引所手数料となります。
IB証券の手数料体系は、米国株式の場合、固定と変動に分かれ、米国オプションの場合は変動のみとなります。
固定プランの場合は取引所手数料は直接関係がありません。固定料金の中に含まれています。
変動プランの場合は、取引所手数料が、IBから直接請求される手数料の他に発生します。

取引所手数料が発生することを前提にしても、小口取引であれば変動プランのほうが安い可能性が高いと思われ、大口取引の場合は場合によると思われます。以下に説明しますが、「流動性付加注文」の場合は変動プランのほうが大幅に有利です。

取引所手数料の仕組みとしては、基本的には「流動性除去注文(Remove Liquidity)」に手数料を課し、「流動性付加注文(Add Liquidity)」にリベートを行う(受取りが発生する)という場合が多いです。手数料とは言いながら、逆にリベートが発生する場合があるということです。
「流動性除去注文」とは、即座に約定する注文(成行の他、即座に約定する指値での指値注文)を言います。「流動性付加注文」とは、即座に約定しない注文(即座に約定しない指値注文)を言います。つまり、即座に約定する注文(市場性注文、marketable注文)には取引所手数料がかかる場合が多いということです。
マーケットオープン時の約定には別の手数料を設定している取引所もあり、その場合、通常の「流動性除去注文」の手数料よりも大幅に安くなるかゼロになるところもあります。
実際の手数料体系は取引所によって異なります。
この取引所手数料の影響が大きいのは、大口の株式注文と、数量関係無くオプション注文です。

株式の場合、流動性除去注文には通常(マーケットオープン時などを除いて)、概ね1株0.003ドル前後の手数料がかかる取引所が多いです。一方でIB証券の変動プランの手数料は1株0.0035ドルで、1取引の最低手数料は0.35ドルです。さらに他の手数料も多少かかります。
固定プランの場合は1株0.005ドルで、1取引の最低手数料が1ドルです。
つまり、変動プランにおいて合計手数料が1ドル未満になる小口取引であれば変動プランのほうが有利です。それ以外であれば、流動性除去注文は固定プランが有利な傾向、流動性付加注文は変動プランが有利です。

オプション注文はIB証券の最低取引手数料は1ドルですが、取引所手数料は流動性除去注文に対して1枚0.4~0.5ドル程度かかることが多い(Penny Pilot銘柄の場合※)ため、影響が大きいです。
※Penny Pilotとは、通常より細かい値幅での注文を可能とするプログラムで、一定の銘柄が加入しており、オプション価格が3ドル以上は0.05ドル、3ドル未満は0.01ドルでの注文値幅となります。実際に表示されているBid/Ask値を確認すれば、それがPennyPilot銘柄なのか判断できると思われます。
逆に流動性付加注文には0.3~0.4ドルのリベートが発生する取引所も多いです。

取引所手数料が多く課されることを避けるには、
・即座に約定される市場性注文を出来るだけ避ける
・マーケットオープン時での約定を狙う(マーケットオープン前に注文を出しておく)
といったことが考えられます。

ただしオプション銘柄は通常マーケットオープン時にはスプレッドが大きく開いているので、マーケットオープン時での成行注文は避けた方が良いです。

取引所手数料は、注文の約定可能性と関係しているので、単純に取引所手数料の徴収が少ないまたはリベートがあるから良いとは言えません。つまり仮に取引所手数料が多く掛かったとしても、それは実勢価格が「約定価格+取引所手数料」であったと解釈できます。つまり取引所手数料は、銘柄の1ティック(最小値幅)未満で変動する隠れた価格です。市場動向によって、安い取引所手数料の取引所が最良気配値を提示していたり、そうで無かったりします。そのため基本的には、その時にかかる取引所手数料は市場動向を反映したものだと思います。
ただし非市場性注文のほうが市場性注文よりも有利な価格(取引所手数料を考慮した合計価格)で約定しやすいことは変わらない気がします。

取引所によって手数料体系が異なることは前述しました。どの取引所で約定されるか分からないため、実際に手数料がどうなるかが分からないという点があります。
しかしIB証券では、これら取引所手数料も考慮した上で最良の約定結果となるよう注文が発注されるシステムを採用しています。このシステムをスマートルーティング(Smart Routing)と言います。注文の発注先にSMARTを選ぶとスマートルーティングとなります。

次に、即座に約定しない指値注文について見てみます。これについてもリベート額は取引所によって異なります。ゼロの場合もあります。出来るだけ多くのリベートを受け取りたい場合、取引所を直接指定するよりもIB証券のスマートルーティング機能に追加設定が用意されており、それを使用できます。
TWSの設定にて、「注文」→「SMARTルーティング」の画面を開き、そこで注文の際に選択できるSMARTの種類を追加することができます。標準のスマートルーティング以外にリベートを重視したプログラムまたは約定可能性を重視したプログラムの追加が行えます。注文エントリーや注文チケットにて選択できる「発注先」のリストに、ここで選択したSMARTが追加されます。ここで追加的に選択できるSMARTは、市場性注文には適用されず、非市場性注文のみに適用されます。
株式とオプションで別々の設定を行うようになっています。選択できるものは以下です。
・Maximize Rebate
・Prefer Rebate
・Prefer Fill
・Maximize Fill
前者であるほどリベート額を重視したプログラムとなります。
リベートを重視するほど約定可能性は低くなります。分かりやすく言うと、例えば買い注文の場合、リベートの額だけ指値価格からマイナスの指値価格になるのと似たようなことのように思われます。
とすると、このリベート設定によって、1ティック(最小値幅)未満の間での指値を少し自分でコントロールできると言ったものなのかもしれません。オプション銘柄のリベート額は、1ティックのおよそ4割弱です。

こちらの指値価格が、即座に約定する市場性注文になるかならないか分からない時があると思います。出来るだけ市場性注文にはしたくない(出来るだけ流動性付加注文にしたい)が、出来るだけ早い約定も狙いたいという場合は、現在の最良気配値に1ティック分だけこちらに有利な価格での指値を行うことが考えられます。スプレッドが最小の場合は、こちらの注文と同じ側の最良気配値(買注文ならBid)が指値価格となります。この場合、市場価格が少しでもこちらの注文が約定される方向に動けば流動性付加注文として約定されます。
この時、リアルタイムマーケットデータやスナップショットデータを参照しながら手動で指値を指定するのも出来ますが、注文間際に市場価格が動いてこちらの注文が市場性注文となるリスクがあります。これを回避するには「Snap to Market」「Snap to Midpoint」「Snap to Primary」注文が有効だと思います。「Snap to」注文は、特定の参照価格に対して一定のオフセット値のところに指値価格を置く指値注文です。Marketなら最良気配値(こちらが成行注文の場合に約定される価格で、買注文ならAsk)を参照価格とし、Midpointなら仲値、Primayならこちらの注文と同じ側の最良気配値(買注文ならBid)を参照価格とします。
Snap to Marketはプラスのオフセット値(OFS)を設定することで、現在の最良気配値よりもオフセット値だけこちらに有利な価格での指値をするため、即座に約定することが無くなります。スプレッドが最小値幅しか開いていない銘柄であれば、Snap to Marketをオフセット値1ティック(最小値幅)に設定する以外にもSnap to Primaryをオフセット値0で設定することも同様のこととなり、これらの場合はこちらの注文と同じ側の最良気配値が指値価格となります。スプレッドが開いている銘柄であればSnap to Midpointも使えます。これはスプレッドが最小の銘柄に使うと市場性注文になり得るので注意が必要です(実際に試した結果です)。
注意点としてオプション銘柄の場合、通常はスプレッドが狭い銘柄でも、市場のオープン時はスプレッドが開く傾向にあるようです。そういう時は「Snap to Market」にオフセット値1ティックを指定する方法などは避けた方が良いと思われます。安全なのは「Snap to Primary」ですが、これも市場のオープン時に発注されると、適正価格から遠く離れた価格に指値が置かれることがあります。そのため、Snap to注文を市場のオープン前から発注する場合は、注文チケットから時間指定を入れて市場のオープンから数分程度後に発注されるようにしたほうが良いと思います。
Snap to注文は注文方法指定タブでは「SNAP MKT」「SNAP MID」「SNAP PRIM」という略称になっています。これらが注文方法指定タブでグレーアウトしている場合は、TWSの設定→機能→注文管理 から有効に出来ます。
IB証券の注文方法の解説記事はこちらです。
IB証券の注文方法 (TWSの使い方)

手数料に関する具体的な数値についてはIBのウェブページを参照して下さい。
https://www.interactivebrokers.co.jp/jp/index.php?f=2763

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