インデックス投資の基本を解説する記事です。初心者向けにあまり細かい説明は省き、要点をまとめる記事としました。ただし、コストの説明については細かく記載しています。
目次
はじめに
インデックスファンドとは
投資先の分散
運用コスト
インデックスファンドとETFの違い
ポートフォリオの組成
債券について
海外債券について
為替リスク
為替ヘッジの方法
はじめに
インデックス投資は、インデックスファンドやETF(上場投資信託)を用いた資産運用です。ほったらかしで運用でき、かつ経験や知識をそれほど必要としないため、投資初心者や、投資初心者で無くても日々の中で投資に時間を費やせない、費やしたくないという人にとって適した運用方法です。
逆に、投資への熱意があり、投資に時間をかけられる場合であればFXや株式個別銘柄の短期売買に挑戦してみるのも良いと思います。これらの投資方法は高リスクであると思われるかもしれませんが、リスク管理を真面目に行っていれば寧ろそれほどのリスクは無いと思います(私は実践していないので経験からの言葉ではありませんが)。
インデックス投資の一番の利点は、「手間をかけない投資」であることです。短期売買で可能性があるような高い利益率は狙えませんが、独自の優位性によりリスクを抑えつつリターンを高めた運用が可能です。
インデックス投資は投資先を分散することでリスクを抑えます。また、株式市場という長期的には右肩上がりになる可能性の非常に高い資産を投資対象とします。これらの点においてインデックス投資の優位性があります。株式個別銘柄の場合はいくつかの銘柄に集中投資になるためリスクが高く、それらの銘柄の将来は保証されてはいません。会社一つ一つは倒産する可能性があります。それに対してインデックス投資で投資する対象は株式市場全体であり、株式市場全体の価値がゼロになるという可能性はあまり考えづらいです。いくつかの企業は淘汰され、入れ替わりが起こっても、株式市場全体は長期的には成長していく可能性が非常に高いです。FXに関しては通貨ペアを取引対象としますが、通貨そのものは価値がゼロになる可能性は非常に低いです。しかし株式と違い、長期的に成長していくことはありません。それは利益を生まないからです。そのため長期保有には基本的には適しません。株式個別銘柄やFXによる投資は、インデックス投資とはまた違った優位性があります。
インデックス投資には知識をそれほど必要としないとは言え、投資に臨むに当たり一定の知識は必要です。それはこの記事でも解説しますが、本などで知識を取り入れるのも有効です。本でも玉石混交です。投資への理解度が低い著者の書いたものも多いと思います。プロと言われる人でも私から見て、合理性の欠ける見解を持っていたり、素人のような人たちが多く存在します。
しかし、それが上記したような意味での良い本か分からなくとも読んでみる事に意味があります。読んでいくうちに様々な見解を知る事が出来る上、疑問に思う点も明確になってくるからです。様々な考え方を知る事が出来るのは、自分なりに考え、自分なりの見解を持つために役立ちます。
その上でですが、私のお薦めは山崎元さんの著作です。インターネット上でも参考になるコラムが掲載されています。
ダイアモンドオンライン;山崎元のマネー経済の歩き方「http://diamond.jp/category/s-yamazaki_econo」
楽天証券;山崎元 ホンネの投資教室「https://media.rakuten-sec.net/category/yamazaki」
利用する証券会社についてはインターネットの証券会社(ネット証券)を勧めます。手数料が安く、取り扱い商品が豊富だからです。大手の店舗型の証券会社は個人投資家にとって基本的に利用価値が無くなっています。店頭で相談できるということはありますが、親身で有用なアドバイスをもらえる可能性は低いため、いずれにせよ自らある程度の勉強をすることが投資をする上では必要となります。
ネット証券はSBI証券、楽天証券、マネックス証券、GMOクリック証券などがあります。マネックス証券以外は、それぞれが提携するネット銀行と連携できる機能があり利便性が高いです。マネックス証券は米国株に力を入れており、また、レポートや動画による情報提供、ストラテジストによる質問受付など顧客サポートが充実しています。
SBI証券と楽天証券は大手であり総合的なサービスが特徴、GMOクリック証券はCFDやバイナリーオプション、2種類のFX、ソーシャルレンディングなど先進的なサービスを展開しています。GMOクリック証券は米国株の取引はできないようです(CFDという形であれば可能)。
インデックスファンドとは
インデックスとは指数のことで、インデックスファンドとは指数に連動するファンド(投資信託)のことです。指数には様々ありますが、代表的なのは日経平均株価、TOPIX、S&P500などです。これらは一定の株式銘柄の集まりから成る価格を表しています。日経平均株価は日本の代表的な企業225社の株価平均を表しています。TOPIXはより広い範囲の企業をカバーしています。S&P500はアメリカの代表的な企業500社から成る価格指数です。これらの指数に連動するファンドは、これらの指数がカバーする企業全体に投資しています。一定の市場の平均価値に連動するファンドと言えます。このようにして投資先の企業を分散し、一定の株式市場全体に投資するようにしてリスクを抑えます。インデックスファンドはパッシブファンドとも呼ばれます。
投資信託にはインデックスファンドとアクティブファンドがあります。個別銘柄を選別する事によりインデックス(市場平均)を上回るリターンを目指す投資手法の事をアクティブ運用(積極型運用)と言います。
対して、インデックスファンドのようにインデックス(市場平均)に追従するだけの手法をパッシブ運用(受動型運用)またはインデックス運用と言います。
アクティブファンドはインデックスを上回る成績を狙うとは言え、インデックスファンドの成績(市場平均)を実際に上回れるのかというと、必ずしもそうではありません。
アクティブファンドであっても複数の銘柄に分散はしますが、インデックスファンドのように完全な分散は行わないため、どうしてもリスクは高まります。
また、アクティブ運用型のファンドの平均はインデックスに負けている、という事実があります。
アクティブ運用型のファンドは手数料が高いため、その分は確実にリターンを押し下げます。
インデックスを上回れそうなアクティブファンドを事前に見つけられるかどうか、または自分でそのような投資ができるかどうかが焦点となります。
何故、プロが運用するはずのアクティブファンドが市場平均に負けているのでしょうか。これはプロでも市場平均に勝つことは難しいという点があります。
しかしアクティブ運用のファンドが皆、プロの運用なのかというと、私はこれに疑問があります。
証券会社で売られている投資信託を見ていると、単なる手数料稼ぎのためのファンドがほとんどで、まともな運用を目指しているものは少ないと感じます。
例えば、宣伝となるキャッチコピーを打ち出して、あたかも良さそうに見せかける事で集客を図るファンドなどです。
そして流行に応じてキャッチコピーを変えながら新しいファンドを次から次へと売り出していく、という手法が見られます。
このようなケース以外にも、投資信託の運用業務は顧客のいる商売である事を考えれば、すぐに成果が求められるので長期的な視野に立った運用がしにくい、顧客からのイメージが悪くなる手法は取りにくいといった制約がある場合も想定できます。
まともなアクティブ運用を目指しているファンドであれば、そもそも他より優れた運用をする自信が無ければファンドを立ち上げません。
アクティブ運用の平均はインデックスに負けているのですから、他より優れた運用をする自信が無ければ、投資のプロと言えども顧客にはインデックス運用を勧めるのが良心的です。
優れたアクティブファンドを探す際には、そのあたりの納得の行く説明をしている、もしくは独自の投資哲学を持っているものを候補にする事が良いと思います。
だからと言って優れたファンドかどうかは分かりませんが、少なくとも本気度の低いファンドを取り除く役には立つと思います。
アクティブファンドに投資してみるのも十分選択肢になると思いますが、インデックス投資ではインデックスファンドを主体として運用します。
また、ETF(上場投資信託)というものがあります。ETFとは、取引所に上場され、一般の株式と同じように取引が出来る形となった投資信託です。どちらでもインデックス運用に使えますが、細かい違いがあります。
投資先の分散
インデックス投資では投資先の分散を行うことでリスクを分散、軽減させます。そこで「相関性」という考え方があります。値動きの似た物同士に投資しても、あまりリスクの分散にはならないため、出来るだけ相関性の低い資産を組み合わせて投資を行うことで、リスクの分散が図られるという考え方です。これは現代ポートフォリオ理論とも言います。
インデックス投資ではそのために、株式、債券、商品(コモディティ)を組み合わせるのが一般的です。株式は最も高いリターンを狙える資産ですが、下落リスクも高いです。債券は株式が下落した際に上昇しやすいという特徴を持ちます。商品(コモディティ)について特に貴金属が候補となり、これも株式とは逆相関に動くことが多いです。
ただし、相関性の低さだけでは投資先の資産を決定することは出来ません。投資先の資産の「割安性」も大事になります。投資の基本は安く買って高く売ることであり、それを考えると高い資産にはなるべく投資することは控えるべきです。
株式、債券、商品(コモディティ)それぞれに投資するインデックスファンドやETFがあります。
さらに株式については「地域の分散」を行います。日本株式、米国株式、ヨーロッパ株式などに分散して投資を行うのが基本となります。債券に関しては外国債券に投資することのデメリットも大きいため、一概に日本以外に投資することが勧められる訳ではありません。→為替リスク
地域の分散を行うとは言え、株式や債券などの資産は世界的に繋がっており、国ごとの相関性は高いです。それでも国固有のリスクを軽減するためにも、地域の分散は重要になります。
時間の分散を行うことも有効です。これは、一つのタイミングで一気に投資を行うのではなく、複数回に分けて資金を投じていくということです。今が底値だと分かれば一気に投資が出来るのですが、誰も今が底値だと分からないため少しずつ投資していくのがリスク軽減となります。
運用コスト
インデックス運用で大事なのは手数料、つまり運用コストです。インデックスファンドやETFは基本的にはアクティブファンドよりも運用コストが安いのですが、その中でもコストに差があります。
投資信託にかかるコストは次の3点です。
「売買手数料」「運用コスト」「信託財産留保額」
売買手数料に関しては、殆どのネット証券では「ノーロード」と言い、インデックスファンドに関しては無料となっています。
大きいコストは「運用コスト」で、これは投資信託の保有時に継続的にかかります。この「運用コスト」が最も低いファンドを選ぶことが重要です。コストが安いからといってインデックスファンドの場合は運用成績が劣るといったことは基本的にはありません。しかし、ファンドによってはトラッキング・エラーといって参照する指数からファンドの価格が乖離する幅が大きくなることがあります。しかし一般に知られたファンドであればあまり気にしなくても良いと思います。
「信託財産留保額」は、投資信託を解約した時にかかる手数料ですが、これを設定しているインデックスファンドは少なくなっています。
ETFの場合は、売買手数料と運用コストがかかります。売買手数料は株式の売買手数料と同じです。NISA口座であれば無料となります。
運用コストの見方について解説します。運用コストの主なものは「信託報酬」で、これは投資信託やETFの目論見書などに記載があります。しかし、特に投資信託については信託報酬以外の費用もそれなりにかかることがあります。投資信託については「運用報告書」で実際にかかった費用の明細を知ることができます。「一万口あたりの費用明細」などと書かれている項目に明細が記載されています。ここに「比率」が書いてあります。この明細の計算期間が1年ならばその比率がそのまま運用コストになりますが、計算期間が半年などの場合は、1年に換算します。国内ETFも運用報告書で調べることができますが、少し難しそうです。米国ETFの場合は、記載の運用コスト(Expense Ratio)がほぼ運用コスト全体であると思われます。
注意点として、投資信託にはファンドオブファンズと言って、投資信託の投資対象が更に別の投資信託かETFとなっている場合があります。この場合、信託報酬は二重にかかるのですが、投資信託の手数料の説明には投資先の信託報酬分は書かれていない場合があります。これを判断するには投資信託の投資先に別の投資信託かETFがあるかをチェックする必要があります。「マザーファンド」を通して投資するという説明は良く見かけますが、これは違う意味です。参考として以下のウェブサイトを挙げます。
http://noload.558110.info/
こちらでは投資信託の詳しい情報が載っています。ファンドオブファンズの情報も確認できるので、実質的なコストが分かります。
また、それ以外にもファンドオブファンズの不利な点があります。米国外の株式に投資するファンドオブファンズが米国ETFを介する場合、米国での課税が発生するため、分配金の10%程度のコストが余計にかかります。詳しくは→海外ETFと国内預託証券(JDR)にかかる分配金課税について
低コストのインデックスファンドとしては「eMaxis Slim」「ニッセイ <購入・換金手数料なし>」シリーズなどが有名です。国内株式、外国株式(先進国株式)、新興国株式など、投資先ごとに分かれており、基本的な資産にはこれらのインデックスファンドを用いて投資が行えます。また、全世界の株式に一括して投資を行えるものもあります。
インデックスファンドとETFの違い
インデックスファンドとETF、どちらで運用するのが良いかという問題があります。どちらを選ぶにせよ、低コストで運用できるものを選ぶことが大事です。インデックスファンドとETFの違いを見ていきます。
信託報酬
信託報酬はETFのほうが低い傾向にありますが、最近ではあまり差が無くなってきています。
売買手数料
ETFの場合は株式と同じ売買手数料がかかりますが、NISA口座では無料であることが普通です。
約定のタイミング
ETFは取引所に上場しているため、取引所が開いている時間帯であればリアルタイム取引が出来ます。投資信託(インデックスファンド)は約定するタイミングが決まっています。国内資産であれば取引所が終わるまでの注文であれば、その日の終値で約定しますが、海外資産であれば、当日の東京証券取引所の終わり(大引け,15:00)までの注文であれば、その後に開かれる当概資産の上場する海外取引所での終値で約定します。
参考URL 楽天証券の該当ページ
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fund/guide/timing.html
約定価格
ETFは指値を行えるため、これ以上の価格では購入しないといった注文が可能です。それに対し投資信託(インデックスファンド)は約定価格が分かりません。
ETFは純資産価格(NAV)と市場価格に乖離が発生する
ETFは純資産価格(NAV)と市場価格の間に乖離が発生します。つまり、ETF本来の価値と市場価格の間で乖離が発生します。ETFの流動性が低いほど乖離は大きくなるため、ETFを選ぶ際は出来るだけ流動性の高いものを選ぶ必要があります。→ETFにおける市場価格との乖離について
国内ETFでは流動性の高い銘柄は限られるため、海外ETFのほうが有用である場合も多いです。
分配金の扱い
分配金(配当)とは、株式においては企業が出す利益の一部を投資家に配分するものです。分配金として配分しない利益は、企業の内部で内部留保として留まり、主に企業の成長や新たな利益獲得のための事業資金として留保されます。
投資信託は分配金を出すものと出さないものがあります。出さないものは、分配金を投資信託の内部で再投資しています。低コストの優良なインデックスファンドであれば出さないものが多いです。分配金を出すとその分に課税されるため、投資家が自ら分配金を再投資する際に、再投資分が目減りするという点があります。分配金を出さない投資信託の場合はその課税を先送りにします。分配金を出す投資信託の場合でも、分配金を自動で再投資してくれるシステムが利用できますが、課税はされます。
ETFの場合、株式や債券に投資するタイプでは、必ず分配金を出します。自動再投資が出来ないため、手動で再投資を行う必要があります。その際には売買手数料がかかる(NISA口座以外)など、投資信託の再投資よりも不便な面があります。
NISA口座であれば、投資信託、ETFどちらの分配金にも原則として課税されません。例外として外国資産に投資するETFで株式数比例配分方式の対象外であるものは、分配金に対してNISA口座であっても課税されます。
複利の力を最大限に生かすためには、株式が出した分配金を再投資する必要があり、かつ分配金への課税が無い方が良いと言われます。複利とは、投資元本から発生する利益を再投資し続けることによって、雪だるま式に投資資金を増やしていくことができるという理論です。確かに投資対象資産が右肩上がり(価格の上昇が続いている)状態であればその通りなのですが、下落する場合においては下落幅は大きくなります。分配金の再投資によって投資総額を増やしているのですから、下落リスクも高まります。株式が下落する場合においては、分配金を再投資せずに取っておいて、株式資産が一定以上に下落した際に追加投資をしたほうが安く買えるため有利となります。しかし株式が下落するかは誰にも分からないという点もあります。
株式というのは常に利益を生み出し続けている資産であるため、長期的には右肩上がりになることが期待できる資産です。そのため出来るだけ早めに再投資を行うことで、資金を無駄にせず複利効果を生かせる可能性が高くなります。
外国株式に投資する投資信託またはETFの場合、その分配金については通常は外国での課税も受けます。米国資産の場合は、軽減税率が適用されるため10%となります。これは分配金のみへの課税で譲渡益への課税はありません。この外国での課税の一部を日本での課税額から控除できる制度として「外国税額控除」というものがあるのですが、この適用を受けるのは分配金が出される投資信託またはETFのみです(投資信託については2020年度から外国税額控除が適用)。外国税額控除によりどの程度の控除があるかは人によりますので一概に言えません。
海外ETFやJDRを用いる際は、現地での源泉徴収課税が高くなる場合があるため気を付ける必要があります。→海外ETFと国内預託証券(JDR)にかかる分配金課税について
現時点での結論
ETFとインデックスファンドで細かい違いはありますが、まずは信託報酬を比べること、そしてETFの場合は流動性の高いもののみに絞ることをポイントとして抑えれば、後はあまり大きな問題では無いようにも思います。基本的には、「eMaxis Slim」や「ニッセイ <購入・換金手数料なし>」シリーズなどの低コストのインデックスファンドを中心に運用するのが、分配金の再投資の手間もかからずに良いと思います。それらで補えないもの、扱いの無い資産についてETFを利用するという形になるかと思います。こだわるなら、外国税額控除について調べてみるのも良いと思います。
ポートフォリオの組成
ポートフォリオとは、投資資産の内訳や配分比率を表したものです。このポートフォリオをどのように組むかということについて解説します。
投資資金は、生活資金とは別の余剰資金を用います。この余剰資金を用いた投資資金の中で、投資先の内訳を考えます。
インデックス投資では相関性の低いもの同士を組み合わせることで、全体のリスクを抑えます。インデックス投資の中心を担うのは株式(国内外)、債券、貴金属(主に金)です。債券と貴金属は、株式のリスクを抑えるために入れられる資産です。
このあたりの配分をどうするかは、個人の状況や、現在の資産の市場価格によります。
2019年現在では、債券の価格は世界的に高水準であることから、債券への投資は抑えた方が良いと思われます。債券は市場金利が高くなれば価格が下落し、市場金利が低くなれば価格が上昇します。債券の満期が長期であるほどその価格変動が大きくなります。
そのため、国内外の株式への投資を中心に、貴金属を入れ、残りは現金または短期債券で保有するという形が良いと思われます。短期債券は性質としては現金に近く、価格変動リスクが少ないため安心して投資できますが、マイナス金利下では現金のほうが良いと思われます。
債券とは、基本的には国債のことを指します。社債についても信用力の高いものであれば国債に準じる値動きをしますので一定程度は入れることが出来ます。ただし、信用力の低い社債(ハイイールド債など)は逆に株式の値動きに近くなるため、株式のリスクヘッジ(リスク軽減)目的でポートフォリオに入れることは出来ません。
貴金属については主に「金」が投資対象となります。金は安全資産と言われ、景気が悪化した際や株価が下落した際に価格が上がり易い資産です。ただし、金の市場価格が割高であればあまり多くは投資しない方が良いと思います。様子を見ながら少しずつ購入するのが安全です。
金への資金配分割合ですが、金そのものは株式と違って利益を生みませんので、長期的には株式のパフォーマンスに大きく劣後することが予想されます。そのため、一般的には投資資金の10%程度を目安とするのが良いと言われます。私もその程度が良いと思います。ただし価格水準が安ければ、20%に増やしたりするのも良いと思います。金以外には銀やプラチナがあり、価格水準にもよりますがこれらを分散して買うことも良いと思います。
貴金属投資の具体的な方法については→低コストの貴金属投資を考察(金・銀・プラチナ)
株式の場合、世界の株式市場に分散投資することが基本となります。世界的に値動きの相関性は高いのですが、それでも国固有のリスクを抑えるためにも分散投資を行います。
インデックスファンドやETFは時価総額比率によって資産配分を決定している場合が多いです。例えば「外国株式インデックスファンド」という名称のものの場合、日本を除いた先進国全体に投資しますがその中の60%前後はアメリカへの投資となり、残りはヨーロッパ、カナダ、オーストラリア等となります。時価総額比率で配分した場合、日本市場は世界のうちの10%に満たないのですが、日本株式にどの程度投資するかは任意です。新興国への投資も行うことが出来ます。新興国株式に投資するインデックスファンドやETFは、基本的に中国への投資比率が高く、更に新興国と呼べるかどうか分からない台湾と韓国の比重も大きく、これら3国で60%程度を占めます。インドや東南アジア諸国など本当の新興国と呼べる国々の割合が少ないのですが、現状では良い投資信託がありません。
投資配分の例ですが、日本株式2、外国株式(先進国株式)4、新興国株式1 と言った感じで組みます。全世界に一本で投資する投資信託もあります。
投資資金は全額株式に投資することも可能ですが、リスクが大きくなります。長期的な運用が前提であればそれでも最終的には利益を得られる可能性が高いのですが、より安全に運用するのであれば株式への投資比率は抑える必要があります。ただし、積立NISAやiDeCoを利用した積立投資の場合は、少額ずつ時間的な分散を効かせながらの投資となり、かつ税制の優遇もあるため、全額株式で投資しても構わないと思います。
しかし基本的には株式とその他防衛資産(現金や債券、金)を分けて保有することを勧めます。この比率についても個人によるのですが、例えば株式:防衛資産を1 : 1とします。
右の図は、ポートフォリオの資産配分の例を示したものです。実際の資産配分は、個々人のリスク許容度によって決めます。
債券については、前述した通り2019年現在では投資する魅力が無いため、現金で代用するのが良いと思われます。
防衛資産を保有することにより、リスクを抑えることが出来ますし、株式資産が下落した際には防衛資産を用いて株式の追加投資を行うことが出来ます。現金や債券を一定量保有する最大のメリットは、株式の下落時に、割安となった株式を買うことができる点です。
投資の基本は安く買って高く売ることです。しかし、今がどの程度の水準の価格なのかは、極端な場面を除いて分からない場合が多いです。そのために、通常は株式を例えば5割保有し、株式の下落時には株式資産の保有を少しずつ増やすという手法が有効です。常に投資する資金と、追加投資のための資金に分けるということです。注意点として、株価の下落時にすぐに追加投資を行ってしまうとリスクを高めてしまいます。そのため例えば株式資産が高値から30%以上下落した場合にのみ、その地点から下落するに連れて少しずつ追加投資を行っていくといった方法があります(以前は10%以上の下落から追加投資するのが良いかと考えていましたが、リスクが高いため考えを改める必要があると思いました)。一度に大きな額を追加投資してはいけません。追加投資分は、下落した株価が元の水準に戻った際に売却し、ポートフォリオ内での当初の資産配分に戻します。
より保守的な運用をするのであれば、当初の資産配分比率を崩さないという方法もあります。もっとも、資産の価格が変動するに伴い、ポートフォリオ内の資産比率も自然と変わってきます。これを元の比率に戻す際には、自然と「安く買って高く売る」ということがなされます。元の資産比率に戻すために上昇した資産は売られ、下落した資産は買われるからです。これを「リバランス」と言います。
リバランスの行う頻度はあまり多く無いほうが効果的です。資産価格が一定以上変動した時、または年一回と決めた時期に行うといった方法があります。
債券について
債券の価格に影響を与えるのは市場の金利動向です。市場の金利水準が上昇すれば債券価格は下がり、金利水準が下落すれば債券価格は上がります。そして、そのような金利変化が債券価格にどの程度の影響を与えるかは、その債権の満期日までの残存期間によります。
満期日までが短い債券(短期債券)は市場金利の動向に影響を受けにくく、満期日までが長い債券(長期債券)は市場金利の動向に影響を受けやすくなります。つまり、短期債券のほうが価格変動リスク(ボラティリティ)は少なくなります。
金利変動によってどの程度債券価格が変動するかを表す指標があり、これを「デュレーション」と言い、満期までの残存期間を加重平均したものとなります。「金利の変化幅(%)×デュレーション」が、債券価格の変化率となります。
また、市場金利や債券価格というのは世界的に連動しています。
株式が下落すると、金利も下落するのが通常で、その際は債券価格が上昇します。短期債券のほうが価格変動リスク(ボラティリティ)は低いのですが、株式のリスクヘッジとしてより機能しやすいのは価格変動の大きい長期債券です。
しかし長期的な視野に立ってみると、株式との逆相関という要素だけで長期債券を保有するのが良いとは一概に言えず、もう一つ重要な要素は資産の割安性です。2019年現在では市場金利の水準が世界的に低く、債券価格が高値にある状態です。これは特に長期債券に言えることとなります。そのため、いくら株式との逆相関が強いとは言え、長期的な視野で見ると高値にある資産は買いづらいということが言えると思います。
債券は基本的には国債(国が発行する債券)のことを指します。国債は信用力が一番高い債券です。社債は企業が発行する債券となり、信用力は国債よりも落ちます。その分金利が高いのが通常です。国債の金利水準はリスクフリーレートとも呼ばれ、無リスクでの金利水準を表す指標となります。国債よりも信用力が落ちる社債は、このリスクフリーレートに上乗せ金利を乗せた利率で発行されます。この上乗せ金利部分をイールドスプレッドと呼び、より一般的にはリスクプレミアムとも呼びます。信用力が低いほど、イールドスプレッドまたはリスクプレミアムが大きくなります。この上乗せ金利部分は、投資家がリスクを引き受けることに対しての見返りと言えます。
リスクプレミアムの概念は株式にも共通します。株式の現在の利回りが、国債の金利よりもどの程度高いかをリスクプレミアムという言葉で表現します。
イールド・スプレッドやリスクプレミアムは、市況の変化によって変わります。景気が悪化したり株価が下落している時はこれらの価値が大きくなります。つまり、それだけ資産の信用力が落ち、リスクが高まっているということが市場参加者の合意となるということです。リスクプレミアムが高まるほど、国債に対する当該資産の利回りは上昇し、割安性が増します。
国債は株式と逆相関が強いですが、信用力が落ちる債券になるほど逆相関が弱まります。リスクの高い債券であれば景気にも敏感となるため、株式と同じように動く傾向が強くなります。それを考慮してポートフォリオを組む必要があります。
海外債券について
海外債券は日本債券と比べて金利が高いため、海外債券に魅力を感じる人も多いと思います。実際に証券会社や銀行の商品でも、海外債券のインカム(金利収入)狙いで投資を行う投資信託が多数設定されています。
しかし注意が必要なのは、その国の金利というのはインフレ率に連動する傾向が強いということです。金利というのはインフレを抑えるために設定するからであり、長期的にはその国の金利水準とインフレ水準は一致する傾向が強いです。短期的には一致しない場合も多いです。
インフレがあるということは、その通貨の価値がそれだけ目減りしていくということであり、これは為替にも影響を与えます。つまり、インフレによって通貨の価値が減少していくだけ、為替レートにも通貨安の圧力がかかります。しかしこれも長期で見た限りであり、短・中期的にはむしろ逆のことが起こる場合もあります。
そのため、何も考えずに高金利の海外債券に投資したとしても、長期的には当該国の通貨安によって、得られた金利分が相殺されてしまう可能性を考慮すべきです。債券投資をする際は、表面利回りからインフレ率を引いた実質利回りを見ることが大事だと思います。
為替リスク
外国資産に投資する場合、為替リスクがあります。投資をする上ではなるべくリスクを抑えることが重要なので、為替リスクというのはその観点から見ればなるべく無い方が良いと捉えられます。為替リスクは「為替ヘッジ」によって抑えることが可能です。為替ヘッジというのは外国通貨を売り、日本円を買う取引のことを指します。海外資産を持ちながら、通貨は持たないということになります。
一方で為替ヘッジを行う場合、為替リスクを抑えることが出来る代わりに、外国通貨を持たないことになるため、通貨の分散効果が働きません。日本円に集中投資していることになります。
インデックス投資では投資先の分散を重要視しますから、その意味では為替ヘッジを行わず、外国通貨を保有する方が良いと捉えられます。
為替リスクは外国資産の価格変動リスクを高める一方で、日本の通貨価値が下がった時のためのリスクヘッジ(リスク回避)になります。
通常であれば、世界的に株価が下落した際には日本円は上昇します(円高になります)。為替ヘッジをしていなければ海外資産は悉く下落し、海外の株式資産であれば円高との相乗効果で下落幅が大きくなります。逆に世界的に株価が上昇した際は円安との相乗効果で上昇幅が大きくなります。このように為替ヘッジが無い場合は通常であれば海外資産の価格変動リスク(ボラティリティ)は増大します。
しかし、将来的に万が一日本固有の問題が起こった際は、株安となると同時に円安となることも十分に考えられます。円安になれば、海外通貨は上昇します。そのような事態に備えて一定の海外通貨を保有することは意味があることだと思います。
これらを踏まえて、海外資産に為替ヘッジを行うかどうか、行うとしたら何割程度行うのかという点は個人の裁量となります。
海外の通貨を保有する場合、どのような形で保有するかということについて解説します。
基本的には株式の形で保有することが良いと私は思っています。
現金(預金)や債券という形で海外通貨を保有する場合、確かに株式由来のリスクはありませんが、利益もほとんど生みません。
通常であれば世界的に株安の際は円高となるため、海外通貨は株式と揃って下落します。そのため、海外の現金や債券の保有は、株式のリスクヘッジにもなりません。債券であれば株式と逆相関の値動きをする傾向があるものの、為替変動によって相殺されます。
このような時、株式であれば更に下落率が高まることになりますが、株式は長期的には利益を生む可能性が非常に高い資産です。
そして海外通貨の保有の目的は、将来的に日本に何らかの問題が訪れた際のためのリスクヘッジです。そのため、通常時であれば何の役にも立ちません。
いつ来るか分からない問題に備えるために、利益を殆ど生まない債券などに投資するよりは、株式に投資しておくほうがずっと有利なのではないかという考えです。ただし、金利が高い時など債券が利益を生む局面もあるため、海外債券を一概に否定する訳ではありません。
為替ヘッジの方法
為替ヘッジを行う場合はFXを利用します。為替ヘッジ付きの投資信託もありますが、数は少ないです。
FXにて、海外資産の通貨を海外資産の額だけ売り、日本円を買います。米国資産を為替ヘッジするならばUSD/JPYを売ります。注意点としては、為替によらない元々の資産価格の変動があった場合、為替ヘッジは不完全になるか、過剰になります。とは言え、その価格変動が極端で無ければあまり気にするほどのことでも無いと思います。
また、為替ヘッジには金利コストがかかるか、受け取りが発生します。日本円に対して海外通貨をヘッジする取引であれば通常は金利コストがかかります。
原則としては「海外通貨の短期金利 - 日本の短期金利」がコストとしてかかります。そのため、高金利の新興国通貨などに対し為替ヘッジを行うと、継続的に大きいコストがかかることになります。仮にインフレ率が高い通貨であっても為替が通貨安になるとは限らず、しかし金利コストは確実にかかります。しかし高金利国の株式は、金利水準と併せて配当金額も高いことが多く、それによって相殺できることも多いです。ただし、新興国通貨はFX会社で取り扱いが無いケースも多く、有ったとしてもFX会社が独自に設定する金利レートが高い場合も多いため為替ヘッジが行いにくいことは確かです。
FX会社では金利水準が各社異なります。基準となる金利(参照する金利)は同じなのですが、提示する金利水準は違っています。FXで発生する金利をスワップポイントと言い、日々加減されます。為替ヘッジに利用するためにはこのスワップポイントのマイナス幅がなるべく少ない会社を用います。
FX会社には、スワップポイントに対して上乗せレートを手数料として設定しているところと設定していないところがあります。設定しているところは、マイナススワップ(金利がかかる)が多く、プラススワップ(金利が受け取れる)が少なくなります。手数料が無いところは、マイナススワップとプラススワップで、±を除いた絶対値が同じ値となります。
傾向としては、売りと買いで絶対値が同じか差が少ないFX会社を利用することで、長期的にコストを低く抑えることが出来ると思います。当該通貨の売りにかかるスワップポイントで各FX会社比を較してみてください。提示するスワップポイントの水準は時期によっても異なるので今の水準だけでは判断できないのですが、伝統的にマイナススワップが少ないFX会社が存在します。「DMM FX」「外為ジャパン」「GMOクリック証券 FX neo」「セントラル短資FX」です。また、「みんなのFX」「LIGHT FX」はスワップポイントの絶対値が同値で、先進国通貨のマイナススワップが有利かもしれません。
通貨によってもどのFX会社のスワップポイントの条件が良いのかは異なるのですが、大体の傾向としてこれらのFX会社のマイナススワップは少ない(かかる金利が少ない)傾向にあります。セントラル短資FXについては売りと買いでスワップポイントの絶対値に差があるため、長期的にはどうなるか分からないという点があります。DMM FX、外為ジャパン、GMOクリック証券FX Neoはスワップポイント差がかなり少ないです。
「DMM FX」と「外為ジャパン」は同じ会社が運営しており、スワップポイントおよびスプレッド(売値と買値の差)は同じです。違いは取引単位で、外為ジャパンは1000通貨単位、DMM FXは10000通貨単位です。外為ジャパンのほうが少額での取引ができますが、DMM FXには独自のポイント付与があります。GMOクリック証券FX Neoは10000通貨単位、セントラル短資FXは1000通貨単位です。
また、新興国通貨に関してはFX会社によって取り扱いの有無に違いがあります。これらの条件を勘案してFX会社を選びます。