為替相場と為替ヘッジ

2016/05/02

資産運用

海外資産を保有する場合、為替の影響があります。
円安になれば海外資産の価格は上がり、円高では下がります。
この為替の影響をほぼゼロにするのが為替ヘッジです。為替ヘッジでは、海外資産を保有しながら当該国の通貨を売り、日本円を買うことで為替リスクを相殺します。
為替の変動リスクは、資産のボラティリティ(価格変動リスク)を高めるだけで、利益を生み出してくれる訳ではありません。ただし、自分で為替レートの予想(これから円安になる等)が立てられる時は別です。
一方で、通貨の分散として、日本円以外の通貨を保有しておくことには一定の意味があります。海外通貨を保有することで、日本円のみを集中して保有するリスクを軽減します。
これらを考慮した上で、為替ヘッジを行うかどうか、行うとしたらどこまで行うかはその人による問題となります。
短・中期的に見るならば、為替ヘッジによって外国資産の為替リスクを相殺したほうが、投資資産の値動きは安定する傾向があります。日本円は安全通貨と言われ、世界的に株式が下落した際には現在のところ例外なく上昇しています(円高になっています)。このような時、為替ヘッジ無しの海外株式は円高との相乗効果で価格下落が進みます。為替ヘッジがあれば下落幅は少なくなり易いです。逆に世界的に株高の際は、為替ヘッジによって海外株式の利益幅が抑えられる傾向にあります。
もちろん、このような流れが今後も常に起こるとは限りません。日本固有のリスクが発生した時は、円安になる可能性は十分にあります。そのような場合に備えて、一定の海外通貨を保有することには意味があると思います。

為替ヘッジの方法

為替ヘッジを個人で行うにはFX口座を利用します。
日本ではFXが流行っており、FXの運用会社は競争によってかなり低いスプレッド(売買コスト)を実現しています。FXを利用して、保有している海外資産の国の通貨を売り、円を買います。
米国資産を100万円保有していれば、100万円分の米ドルを売り、円を買います。USD/JPYを売ります。
売る場合の継続コストは、「売る通貨の短期金利-買う通貨の短期金利」です。
リターン=買う通貨の短期金利-売る通貨の短期金利
と言い換えることも出来ます。
売る通貨の金利が買う通貨の金利より高い時は、リターンはマイナスでコストになり、逆であればリターンがプラスになります。日割り計算で一日一回かかりますので、一日の金利が端数の場合切り上げられ(金利コストがかかる場合)予想外に大きな金利水準になる時があります。

米ドルを売る場合、米ドルの方が円より金利が高いのでコストがかかり、ユーロを売る場合、ユーロの方が円より金利が低いのでプラスリターンになります。
このコスト及びリターンはスワップポイントと呼ばれます。
スワップポイントの水準はFX会社によって大きく異なります。
また、売りと買いの金利の基準値(参照レート)は±を除いた絶対値が同じなのですが、多くの会社はどちらのスワップポイントからも手数料を差し引いています。プラスのスワップポイントは基準値よりも低く、マイナスのスワップポイントは基準値よりも高く設定する会社が多いです。
スワップポイントにかかる手数料が無いのは「DMM FX」と「外為ジャパン」、「みんなのFX」と「LIGHT FX」、そして取引所の運営する「くりっく365」です。
これらの会社を利用することでスワップポイントの受け払いに関して不利にはなりにくいです。
マイナスのスワップポイント幅が少ない傾向にある会社は、DMM FXと外為ジャパンです。加えてGMOクリック証券FX Neoとセントラル短資FXもマイナススワップが抑えられている傾向にあります。GMOクリック証券FX Neoはスワップポイントの絶対値の差が少なく、セントラル短資FXは差があります。なるべく差が少ない方が、長期的には安定して有利なスワップポイントを提供してくれるのではないかと考えます。

DMM FXと外為ジャパンは同じ会社が運営しており、スワップポイントとスプレッド(売買時にかかる買値と売値の差)は同じですが、外為ジャパンの方が取引単位が小さく、使い勝手が良いです。外為ジャパンは0.1 lot単位(1000通貨)、DMM FXは1 lot単位(10000通貨)です。1000通貨はUSD/JPY=120だとすると12万円です。ただし、先に説明したようにスワップポイントが1 lotにつき一日-1円であれば、0.1 lotでも-1円です。DMM FXのメリットは独自のポイントプログラムがあることです。
GMOクリック証券の取引単位は1lot(10000通貨)、セントラル短資FXは0.1lot(1000通貨)となります。

為替相場の読み取り方

為替が適正水準から円高に振れている時などは、為替ヘッジを段階的に解除していく事も考えられます。為替は常に一方方向に振れ続ける事は無く、リバウンドするものだからです。円高になればなるほど円安圧力がかかります。
何をもって為替レートの適正水準とするかは議論のある所のようですが、基本的に「相対的購買力平価(PPP)」を用いれば良いと思います。
過去のある地点を基準にし、二国間のインフレ格差を基に物価の均衡水準を計算したものです。
消費者物価、企業物価、輸出物価の三種類の指標がありますが、企業物価を主に参照すれば良いらしいです。
参考URL
国際通貨研究所
http://www.iima.or.jp/research/PPP/index.html

見方としては、企業物価のラインから円相場がどれ程乖離しているか、という感じで良いと思います。感覚で掴めれば良いと思います。

為替の「実効レート」という概念も知っておくと便利です。これは2国間の為替レートだけでは掴めない、その国の他国に対する通貨の強さを測るものです。それぞれの国に対する自国の通貨の強さを統合してまとめています。ドルであればドルインデックス、円であれば円インデックスとも呼ばれます。
ただし、インフレ格差は考慮されていません。

投資先の国の通貨が高ければ、下落リスクも高まるので全額為替ヘッジを行い、低ければ上昇圧力が掛かるので為替ヘッジを段階的に解除していくという感じです。

購買力平価」は長期的な均衡水準を表したものです。
長期的には物価上昇の違いが、為替レートに反映されるという考え方で、これはその通りになっています。ただし、短期的には逆の値動きになる傾向があります。

円キャリートレードというものがあります。これは低金利通貨の円を売り、他の高金利通貨を買って金利差益を稼ぐ投資手法の事を言います。日本のFX全盛期に日本の個人投資家(主婦)が用いた投資手法としても有名です。これによる売買代金は為替レートに影響するほど大きく、円が売られることで過度の円安を招きました。
利上げする通貨にはお金が集まる傾向があり、利下げする通貨は売られる傾向があります。
2015年12月にアメリカのFRBが利上げを決めましたが、数年前に利上げの情報がもたらされてからじわじわとドルが上昇しました。
一方金融緩和で金利が低下する国の通貨は売られます。

金利が上昇する国の通貨は買われやすいのですが、金利とインフレ率は連動しています。
金利を上げるのは主に、インフレ率の上がり過ぎを抑えるためであり、高金利通貨というのは高インフレ通貨である傾向があります。高インフレになると通貨の価値は目減りするので、為替レート上では通貨安とならなければ購買力が他国と均衡しません。通貨の価値が目減りしても為替レートが変わらなければ、その国の物価が他国から見て高い事になり、結果輸出は減って輸入は増えます。それが自国通貨売り、他国通貨買いに繋がるので自国通貨安に導かれることになります。

そのため、高金利通貨を買って金利を受け取ったとしても、長期的には通貨安で元本が減り、トータルリターンは円で運用した場合のリターンと同等になるという説明がなされます。

ただし、短期的には金利が上昇する通貨に資金が集まるので通貨高となります。
投資というものは、反対売買による決済をしなければ利益が確定されません。
投資資金が利上げ通貨に集まり通貨高に導かれても、いずれ売り戻しをしなければならず、その時は今までの資金の流れが逆流し、通貨安に戻ります。
このように短期的には利上げ通貨の通貨高という現象が起こります。しかし、それは購買力平価を基準とした乖離の範囲内であって、この基本的な理論を無視する事は出来ません。乖離し過ぎた相場は、いずれ元に戻る事を想定するべきだと思います。

為替を理解するためにお薦めの本は、JPモルガン・チェース銀行の佐々木融氏の書かれた「弱い日本の強い円」です。

弱い日本の強い円 (日経プレミアシリーズ)

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