電気ヒーターは電気のエネルギーをそのまま熱に変換します。
ガス暖房やエアコンと比べて、得られる熱量あたりのコストはかなり高くなります。
そのため、部屋全体を温める用途には向きませんが、局所暖房としてであれば優れた特徴があります。
次に、各電気ヒーターの特徴を述べます。
また、グラファイトヒーターとシーズヒーターの違いについて、私の感じた事を後半で述べます。
各電気ヒーターの特徴
- カーボンヒーター
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カーボンヒーターは、通常の(従来の)電気ヒーターと比べ立ち上がりが速く、同じ消費電力でも体感で暖かく感じるという特徴があります。
発熱体が太陽光色に光り、目の前が暖かくなります。
エアコン暖房でもあまり暖かく感じないという人に適していると思います。
火の近くにいるような感じなので、暖房器具の中では最も暖かいと感じると思います。
勿論、目の前しか熱くなりませんので部屋全体を温める用途には不向きです。
エアコンと併用するのがお勧めです。
ヒーターから出た熱は横に広がりづらく直進に近い形で放射されるので、ある程度離れても暖かさは感じる代わりに、熱の当たる範囲(横幅)は狭いです。
体から短い距離のところに置いていると、体の一部分にしか熱が当たらない上、長時間そのままにしておくと低温やけどを起こしそうなほど熱くなります。
そのため、体から90~100cm程度離して置くのが良いと思います。そうすると体全体に熱が当たる感じになります。
発熱体が自然に壊れやすい、衝撃に弱い、水に弱い、といった事があります。
また、火事にならないように、目の前には物を置かない等の注意が必要です。 - グラファイトヒーター
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カーボンヒーターの一種ですが、発熱体にグラファイト(黒鉛)を使っています。
通常のカーボンヒーターよりも遠赤外線の量が多いという事です。
スイッチオンから全開になるまでの立ち上がりはカーボンヒーターより速く、コンマ数秒です。
通常のカーボンヒーターと比べて耐久性が上がっているという情報もありますが、定かではありません。ただ日本製グラファトヒーター採用のものはその部分だけ2年保証にしている製品を見かけることから、それなりの耐久性はあるのではないかと推定はできます。
その他の性質は、カーボンヒーターと同じです。
通常のカーボンヒーターとの値段の差があまり無いのであれば、グラファイトヒーターをお薦めします。 - シーズヒーター
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ニクロム線を金属管で覆ったものを発熱体としています。
カーボンヒーター系よりも発熱体が丈夫で、水にも強く、耐久性があります。
その代わり即暖性に劣ります。
私が購入したアラジンのシーズヒーターAEH-S802Nは、全開温度になるまで3分前後かかりました。
遠赤外線の発生量が、電気ヒーター中もっとも多いらしいです。
グラファイトヒーターとシーズヒーターの比較を、記事の下方に書きます。 - セラミックファンヒーター
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電気を熱に変換したものを温風として出すものです。
温風として出すために、少しは部屋全体を温めやすいという意見もあるかもしれませんが、エアコンとは比べるまでも無く、非力です。
小さい部屋ならば適しているかもしれません。
実際に使った事はありますが、カーボンヒーターのように体を直接温める訳では無いため、寒がりの人であれば、温風を体に直接当てるとむしろ寒いと感じるかもしれません。
脱衣所に置いた事がありますが、風呂上りには風が当たってむしろ寒かったです。
勿論、消費電力を上げればそれだけ暖かくはなりますが、そもそも「風」というものは体にとっては寒いものです。
体を直接温めるならカーボンヒーターが適している上に、小さい部屋を温める用途であっても、カーボンヒーターとセラミックファンヒーターで、そんなに効率は変わらないと思います。 - オイルヒーター
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部屋全体を温めるための電気ヒーターです。
器具全体から出た熱が上昇し、自然対流によって部屋を暖めるという仕組みです。
電気なので、コストが高く付きます。
しかしエアコンと比べて風が出ない、乾燥しない、ガスファンヒーターのように空気を汚さないなどの特徴のあるクリーンな暖房です。
部屋を暖めるには時間がかかります。
オイルヒーターを有効的に使える部屋は、断熱性が高く、あまり大きくない部屋です。
また、熱が部屋上部にたまり易いと思われるので、シーリングファンがあればより良いと思います。
部屋全体を温める暖房の中でも、クリーンな暖房が良いと言う事であればオイルヒーターは選択肢に入りますが、ガス温水式床暖房のほうが、初期導入コストはかかりますが、ランニングコスト、即暖性の面で優れています。 - パネルヒーター
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パネル状の発熱体から、前面と上面に熱を出すことで、前面暖房と部屋全体の暖房を兼ねようとしたものです。
カーボンヒーターとオイルヒーターの中間と言う事もできそうですが、オイルヒーターに近いです。
私が購入したエレクトロラックスのパネルヒーターは、前面はあまり暖かくならず、主に上面から熱が出ます。
恐らく、他のメーカーのパネルヒーターも似たようなものだと思われます。
そのため、体を直接温める作用を期待する事はできません。カーボンヒーターとは全くの別物です。
とすればオイルヒーターのように部屋全体を温める用途で使う事になります。
シーリングファンとの併用をお勧めします。
グラファイトヒーターとシーズヒーターの比較
私が所有しているグラファイトヒーターはアラジンのAEH-G900N、シーズヒーターはアラジンのAEH-S802Nです。
同等のW数で運転し、比較しました。
シーズヒーターは遠赤外線の放射量が多いため、同W数での比較であれば、シーズヒーターが最も暖かいという意見がありますが、実際にグラファイトヒーターとシーズヒーターを使って比べた身からすると、グラファイトヒーターの方が明らかに暖かいです。
体を直接温める作用はグラファイトヒーターの方が強いです。
手をヒーターの目の前に翳してみると、グラファイトヒーターは火に手を翳しているような強い熱さを感じ、シーズヒーターはぼんやりとした柔らかめの熱を感じます。
熱の届く距離も違い、グラファイトヒーターの方が遠くまで熱が届きます。
シーズヒーターは体の近くに寄せないと暖かく感じません。
確かに、グラファイトヒーターの熱さはジリジリとした熱さにも結び付くので、それがデメリットと言えばデメリットです。
シーズヒーターにはそのような熱さは無く、柔らかく感じられますが、同時に、暖かさも明らかに落ちます。
勿論、長時間使用していての感想です。
また、シーズヒーターは「熱の当たりは柔らかいが、じわじわと後から温まってくる」という感じでもありません。
寒いものは寒いままです。
遠赤外線の量はシーズヒーターの方が多いと聞くのですが、発熱体の温度はシーズヒーターのほうが低いため、それが体感温度の低さに影響しているのでしょうか。
私が購入したアラジンのシーズヒーターは、有名なコロナやダイキンのシーズヒーターよりも安いものですが、基本的な性能は変わらないかと思います。
耐久性はシーズヒーターが優れていますし、水のかかる恐れのある所ではシーズヒーターが良いかもしれません。
しかし、特に寒がりの人であれば、明快な暖かさの感じられるグラファイトヒーターがお薦めです。
カーボンヒーターの特徴はグラファイトヒーターの特徴とほぼ同じですが、グラファイトヒーターの項目に書いた通り、積極的にカーボンヒーターを選択する理由はありません。
部屋を暖める能力の違いについて
私は科学の知識に関しては素人なので参考程度に聞いてもらえればと思います。
良く、カーボンヒーターはハロゲンヒーターや従来の電気ヒーターに比べて遠赤外線の発生量が多いという宣伝文句を聞きます。
他の電気式ヒーターに関しても、同じ消費電力でも暖かさが違うといった宣伝が出回ります。
しかし、消費電力が同じならどの電気式ヒーターでも発生する熱量は同じで、部屋を暖める能力に関しては同じなのではないかと思います。
実際に、「従来の電気ヒーター」「グラファイトヒーター」「パネルヒーター」「セラミックファンヒーター」で同じ部屋を暖めて、暖める能力の違いについて比較した経験がありますが、これらのヒーターの間に部屋を暖める能力の違いは感じられませんでした。
しかし、各ヒーターから発生する熱を、体に直接当てた時の体感の暖かさは全く異なります。
これは前述したとおり、同じ消費電力ならシーズヒーターは寒く、カーボンヒーターは暖かく感じます。
従来の電気ヒーター(ニクロム線が露出したヒーター)の体感での暖かさは、両者の間に位置すると思います。
つまり、遠赤外線の量云々の宣伝文句については、体に直接当てた際の体感での暖かさのことを言っているのであって、実際に発生する熱量と、部屋を暖める能力に関してはどのヒーターでも同じではないかと思います。
そのため、主に部屋を暖める目的でヒーターを買われる場合は、最も安い電気ヒーターでも同じ消費電力なら能力は変わらないという事が言えそうです。
部屋を暖める専用のヒーターとしてはパネルヒーターとオイルヒーターがありますが、これらのヒーターの利点は最大出力が1200W程度あること、そしてカーボンヒーターのような強い放射熱を発生させないため火事の危険が少ないということです。
良く、ヒーター本体から上に出る熱で部屋全体の空気を対流させるという宣伝がされますが、これについては疑問です。
シーリングファンがあるならともかくとして、ヒーター本体から熱が上るだけでは部屋の上部に熱が溜まるだけのような気がします。
そのため、基本的にはこれらのヒーターでも、同じ消費電力での部屋を暖める能力は、他のヒーターと変わらないと結論付けて良さそうに思います。
まとめ
局所暖房としては、グラファイトヒーターが優れています。
空気を温めず、体を直接温めるので、部屋の換気をしながらでも使えます。
隙間風の吹く、低断熱の部屋でも関係なく使えます。
一瞬で暖かくなるなど、利便性が高いです。
デメリットは、近距離の使用では、ヒーターを長時間付けていると熱が当たっている部分が熱くなり過ぎる事ですが、これはヒーターを離すことで解決します。
首振りはお勧めしません。
ヒーターが体の方向を向いていないと、全く暖かくありません。
水の当たる恐れのある場所ではシーズヒーターも選択肢に入ります。
高断熱の部屋や小さい部屋を暖める用途にも、一応電気式ヒーターは使えます。
その場合は基本的にはどのヒーターを使っても暖房効率は同じに思いますが、カーボンヒーター(グラファイトヒーター)に関しては放射熱の直進性が高く、近くに燃えやすい物を置かないなど一応の配慮は必要です。
電気ヒーターやシーズヒーターでも配慮は必要ですが、カーボンヒーター系ほど前面は熱くならないので、それだけ火事の危険性は減ります。
パネルヒーターとオイルヒーターは、高出力可能かつ火事の危険性が最も低いという利点がありますが、即暖性には劣り、人を直接暖めることはできません。また、高価です。
セラミックファンヒーターは、人によっては寒いと感じる可能性があるのでお薦めはしません。